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November 04112008

 十一月自分の臍は上から見る

                           小川軽舟

には「へそまがり」「臍(ほぞ)を噛む」など、身体の中心にあることから派生したたくさんの慣用句がある。そして、掲句の通り、確かに自分の臍は、鏡に映さない限り、普段真上から見下ろすものだ。身体の真ん中にある大切な部位に対して「上から見る」の視線が、掲句にとぼけた風合いを生んでいる。自分の身体を見ることを意識すると、足裏のつちふまずはひっくり返してしか見ることはできないし、お尻は身体をひねってやっぱり上からしか見ていない。つむじやうなじなど、自分のものであるはずなのに、どうしたって直接見ることのかなわない場所もある。十一月に入ると、今年もあとたった二ヵ月という焦燥感にとらわれる。年末というにはまだ早いが、今年のほとんどはもう過ぎていった。上から眺める臍の存在が、十一月が持つとらえどころのない不安に重なり、一層ひしゃげて見えるのだった。〈夜に眠る人間正し柊挿す〉〈偶数は必ず割れて春かもめ〉『手帖』(2008)所収。(土肥あき子)




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